
この記事を書いた人:hiro教員
現役看護教員・元看護師長・国家資格キャリアコンサルタント。現場の厳しさを誰よりも知る元師長として、そして挫折しそうなあなたを全肯定するキャリコンとして、リアルな解決策をお届けします。
「話すのが苦手」と先に言っちゃおう。看護教員歴15年が教える実習コミュニケーションの生存戦略
「患者さんの部屋に行くのが怖い」「教員や指導者と話すだけで心臓がバクバクする」……。実習が始まると、まるで自分だけが言葉を失った迷子のように感じることがありますよね。周りの学生がハキハキと報告し、ナースステーションで指導者と笑い合っている姿を見ると、焦りと孤独感で押しつぶされそうになる。その気持ち、本当によく分かります。
結論から言いましょう。その「怖さ」を感じているあなたは、看護師として最高の資質を持っています。なぜなら、看護とは「相手を傷つけないこと」への細心の注意から始まるからです。30年間にわたり数千人の学生を見てきた私から、あなたの心を軽くし、実習を「生存」し、さらには「成長」に変えるための具体的な戦略を、どこよりも深く解説します。
1. 究極の戦略:先に「コミュニケーションが苦手です」と白旗をあげる

多くの学生さんは「弱みを見せたら評価が下がる」「やる気がないと思われる」と思い込んでいますが、実はその逆です。「自己開示」をして、自分の苦手分野を先に宣言してしまうことこそが、実習における最強の生存戦略になります。
「隠そう」とするから脳がフリーズする
「苦手なことをバレないようにしなきゃ」と自分を繕おうとすると、人間の脳はその「嘘(隠し事)」を維持するために膨大なリソースを消費します。その結果、本来の観察や思考ができなくなり、目の前で指導者に質問された瞬間に頭が真っ白になる――。これが「フリーズ」の正体です。それなら、最初から手の内を明かしてしまいましょう。
そのまま使える自己開示フレーズ
指導者の立場からすれば、これほど助かる言葉はありません。「なんだ、やる気がないわけではなくて、緊張しているだけなんだな」と分かれば、あなたに合わせたスピードで指導を組み立てることができます。弱さを見せることは、プロとしての「リスク管理」であり「誠実さ」なのです。
👉 【関連記事】実習中に焦らない!看護教員が教える「報告に繋がる」メモの取り方と活用法
2. 患者さんとの対話:答えのない問いに「沈黙」で応える技術
実習現場で最も心臓が痛くなる瞬間は、患者さんから「答えのない、重く切実な言葉」を投げかけられた時ではないでしょうか。教科書には載っていない、人間の生々しい感情に触れた時、私たちは無力感に襲われます。
こんな時、無理に励ましたり、医学的な正解を出そうとしなくていいんです。患者さんは「解決策」が欲しくてあなたに話したのではありません。今の絶望を、誰かにただ「聴いてほしい」「一緒にいてほしい」と願っているのです。キャリコンの技術でも重要視される「受容と共感」を具体的に実践しましょう。
「おうむ返し」と「沈黙」が最高の看護になる理由
「……元の体には戻れないのではないか、と不安に思っていらっしゃるんですね」と患者さんの言葉をそのまま返し、その後は無理に喋らず、静かに隣に座り続けてください。あなたが言葉に詰まって、一緒に真剣に考え込んでいるその姿こそが、患者さんにとっては「この人は私の痛みを分かろうとしてくれている」という最大の癒やしになります。
👉 【関連記事】時間が足りない!を解決。実習で本当に役立つ「事前学習」の優先順位とまとめ方
3. 視点を変えよう:教員も指導者も、あなたの「未熟さ」を待っている
ナースステーションで忙しそうに動き回る指導者や、厳しい表情で記録をチェックする教員。彼らは近寄りがたいオーラを出しているかもしれません。しかし、教員歴15年の私から本音を言えば、私たちは「学生さんがいつ相談に来るのか」を、ずっと待っているんです。
教員が声をかけるのは、あなたを評価するためではありません。相談のきっかけを作ってあげたいという「親心」です。私たちは、あなたが「まだ言葉になりません」「何がわからないかも、わかりません」と言ってくれるのを待っています。年代差や立場の違いに物怖じする必要はありません。私たちは、あなたの未熟さを否定するためではなく、共に育むためにそこにいるのです。
4. 指導者への報告を「評価」に変える魔法の3ステップ
報告が苦手なのは、「完璧にまとめなければ怒られる」という恐怖があるからです。しかし、元師長の私からすれば、一番信頼できるのは「自分の不明瞭な部分をさらけ出せる学生」です。以下のテンプレートを使えば、知識不足を「向上心」に変えることができます。
戦略的報告術のステップ
step
1事実のみを伝える:「◯◯さんのバイタルは安定していました」
step
2自分の迷いを伝える:「ただ、患者さんが『食欲がない』とおっしゃり、その原因が病態なのか精神的なものなのか、私の今の知識では判断に迷っています」
step
3確認をお願いする:「今の私の捉え方が合っているか、アドバイスをいただけないでしょうか?」
このように、「事実」+「迷い」+「相談」の形で伝えれば、指導者は「この学生は自分の限界を把握し、安全に配慮できている」と、むしろあなたを高く評価します。報告ができたら、次はそれを「記録」に落とし込みましょう。
「上手く話せない」「アセスメントに自信がない」という学生さんは、最初から自分の頭の中だけで完璧な文章を作ろうとして苦しんでいます。そんな時は、学生専用の『アセスメントの型』や『記録の書き方』が載っている本をカンペとして手元に置いておくのが一番の特効薬です。教員目線で、実習中の「お守り」として持っておくべき2冊を紹介しておきますね。
👉 【関連記事】徹夜を卒業!看護教員が教える、評価される「看護記録」を速く書くコツ
5. まとめ:あなたは一人じゃない。七転び八起きでいこう

コミュニケーションは、自転車の練習と同じです。最初からスイスイ乗れる人はいません。何度も転び、恥をかき、それでもハンドルを握り直すことでしか身につかないスキルです。zehu.jp(七転び八起き)。今日は上手く話せなくても、先に「苦手です」と言えたなら、それは大きな前進です。あなたは決して一人ではありません。私たちが、あなたのそばでずっと待っています。
当サイトのコンテンツは、執筆時点での看護教育・実習等の知見に基づいた一つの事例です。可能な限り正確な情報を掲載するよう努めておりますが、実際の医療現場での判断や実習における指導内容は、各施設や教育機関の規定・指示を最優先してください。本情報によって生じた損害について、当サイトは一切の責任を負いかねます。