
この記事を書いた人:hiro教員
現役看護教員・元看護師長・国家資格キャリアコンサルタント。現場の厳しさを誰よりも知る元師長として、そして挫折しそうなあなたを全肯定するキャリコンとして、リアルな解決策をお届けします。
看護実習の振り返りは、単なる感想ではなく、次の行動につなげるための大切な学習です。
「振り返りに何を書けばいいのかわからない」「毎回似たような内容になる」「書いても評価されている感じがしない」と悩む看護学生は少なくありません。
私は看護師として15年勤務し、看護師長として新人指導にも関わってきました。現在は看護教員として15年間、これまでに約2000人以上の看護学生の実習指導や振り返り指導に関わっています。
その中で感じるのは、振り返りが苦手な学生の多くが、文章力の問題ではなく、「何をどの順番で書けばよいか」を知らないだけだということです。逆に言えば、振り返りには書きやすくなる型があり、その型に沿って考えるだけで内容はかなり整理しやすくなります。
この記事でわかること
- 看護実習の振り返りの意味
- 振り返りが難しい理由
- 評価されやすい振り返りの型
- よくあるNG例
- そのまま参考にしやすい具体例
- 振り返りを深くする考え方
- 指導者が見ているポイント
実習全体の流れに不安がある方は、看護実習の事前学習の進め方もあわせて読むと、振り返りと事前準備のつながりが理解しやすくなります。
看護実習の振り返りとは

看護実習の振り返りとは、その日に経験したことや学んだことを整理し、できたこと、できなかったこと、その原因、今後どうするかを考える作業です。
実習中は、患者さんとの関わり、観察、援助、記録、報告など、短い時間の中で多くのことが起こります。その場では精一杯で、自分がどう動いたのか、何ができて何ができなかったのかを深く考える余裕がないことも多いです。だからこそ、実習のあとに立ち止まって整理する「振り返り」が必要になります。
振り返りは、単なる反省文ではありません。「今日はうまくできなかった」「もっと頑張りたい」と書くだけでは、学びとしては浅くなってしまいます。本当に大切なのは、なぜうまくいかなかったのか、何が足りなかったのか、次は何を変えるのかまで考えることです。
そう感じている学生はとても多いです。ですが、振り返りで求められているのは「その出来事から何を学び、次にどうつなげるか」です。感情を書くこと自体が悪いわけではありませんが、感情だけで終わると評価されにくくなります。
なぜ振り返りが難しいのか

振り返りが難しいと感じるのには、いくつか理由があります。
何を書けばよいのかが曖昧だから
実習記録の中でも、振り返りは自由度が高く、「好きに書いていい」と思われがちです。しかし、自由だからこそ迷いやすくなります。何をどこまで書くべきかがはっきりしないと、感想だけになったり、抽象的な言葉で終わったりしやすいです。
正解が一つではないから
振り返りは、テストのように答えが決まっているものではありません。同じ実習場面でも、何を学んだか、どこに注目したかによって内容は変わります。そのため、「これでいいのだろうか」と不安になりやすいです。
実習中に余裕がないから
実習中は、患者さんとの関わりや記録に追われ、自分の行動を落ち着いて分析する余裕がないことも多いです。その結果、実習後に思い出しながら書くことになり、内容がぼんやりしやすくなります。
振り返りを“評価のための文章”だと思っているから
評価されることを意識しすぎると、失敗や課題を正直に書きにくくなります。しかし、指導者が見ているのは「完璧にできたか」ではなく、「できなかったことをどう受け止め、どう次につなげようとしているか」です。
よくあるNG例
評価されにくい振り返りの特徴
- 感想だけで終わっている
- 「頑張りたい」「気をつけたい」で終わっている
- 具体的な場面が書かれていない
- 原因が書かれていない
- 次の行動が曖昧である
例えば、次のような振り返りはよく見られます。
「今日は患者さんと関わることができて勉強になった。自分の知識不足を感じたので、今後はもっと頑張りたいと思った。」
一見まじめに見えますが、この文章だけでは、何ができて、何ができなくて、どこに課題があって、次に何をするのかがはっきりしません。実際に指導してきた中でも、こうした振り返りは少なくありませんでした。気持ちは伝わりますが、学習としての深さが見えにくいため、評価にはつながりにくいです。
評価される振り返りの基本の型

振り返りの基本の型
① できたこと
② できなかったこと
③ 原因
④ 今後どうするか
この4つの流れを意識するだけで、振り返りは一気に整理しやすくなります。
① できたこと
まずは、その日に自分ができたことを書きます。ここでは「小さなことでも書いてよい」という意識が大切です。患者さんに自分からあいさつができた、指導を受けながらでもバイタルサイン測定ができた、必要物品を事前にそろえられた、などでも十分です。
② できなかったこと
次に、うまくいかなかったことや難しかったことを書きます。ここでは「できなかった」と認めることが大切です。完璧に見せようとせず、自分の課題を正直に整理する方が、振り返りとしては価値があります。
③ 原因
なぜできなかったのかを考えます。知識不足、準備不足、緊張、観察不足、患者理解の不足など、原因はさまざまです。この部分があるだけで、振り返りの深さは大きく変わります。
④ 今後どうするか
最後に、次回に向けた具体的な行動を書きます。「頑張る」ではなく、「次は患者情報を事前に整理する」「報告前に要点をまとめる」「患者の表情を見ながら関わる」のように書くことがポイントです。
「書き方の型は分かったけど、そもそも文章を作るのが苦手で時間がかかってしまう」という方は、教員目線で作られた『記録の書き方』の型が載っている本を一冊手元に置いておくのが一番の時短になります。以下の本などは実習中の強いお守り代わりになりますよ。
実習場面ごとの振り返り例文集

振り返りの例文① コミュニケーション
本日の実習では、患者さんに自分からあいさつし、会話のきっかけを作ることができた。一方で、患者さんの訴えに対して十分に返答できなかった場面があった。その原因として、患者さんの疾患や治療内容についての理解が不十分であり、自信をもって関わることができなかったことが考えられる。今後は、事前に患者情報をより丁寧に整理し、疾患や治療について学習したうえで関わるようにしたい。
この例文では、できたこととできなかったことが明確であり、その原因と改善策まで書かれています。振り返りでは、このように「できなかった」で終わらせず、原因と今後の行動までつなげることが重要です。
振り返りの例文② 観察
本日の実習では、バイタルサイン測定を落ち着いて実施することができた。しかし、測定した値を患者さんの状態と関連づけて考えることが十分にできなかった。その原因として、正常値との比較や疾患との関連づけが不十分であったことが考えられる。今後は、測定した値を記録するだけでなく、なぜその値になっているのかを考えられるよう、事前に疾患や観察項目について学習してから実習に臨みたい。
この例では、「測れた」という技術面だけで満足せず、「その意味を考えられなかった」という課題まで書いています。これが振り返りを深くするポイントです。
「疾患と関連づけた観察ポイントがわからない」という場合は、実習でよく出会う疾患ごとのアセスメントや観察項目が網羅された参考書を辞書代わりに使うと、振り返りの質がグッと上がります。
振り返りの例文③ 清潔ケア
本日の実習では、清潔ケアの準備を行い、必要物品をそろえることができた。しかし、ケア実施中に患者さんの疲労や表情の変化に十分注意を向けることができなかった。その原因として、ケアを安全に実施することに意識が向きすぎており、患者さんの反応を観察する余裕がなかったことが考えられる。今後は、手技の流れだけでなく、患者さんの表情や訴えにも注意しながら援助を行いたい。
振り返りの例文④ 報告
本日の実習では、指導者への報告を行うことができた。しかし、必要な情報を順序立てて伝えることができず、わかりにくい報告になってしまった。その原因として、自分の中で情報整理が不十分であったことが考えられる。今後は、報告前に伝える内容を整理し、結論から簡潔に伝えることを意識したい。
振り返りの例文⑤ 患者理解
本日の実習では、患者さんの日常生活の様子や普段の思いについて話を聞くことができた。しかし、その情報を援助や観察に十分活かすことができなかった。その原因として、情報を集めることに意識が向き、その意味を考える視点が不足していたことが考えられる。今後は、患者さんから得た情報をそのまま記録するだけでなく、援助や観察にどのようにつながるかを意識して整理したい。
振り返りを深くする考え方
振り返りを深くするためには、「なぜ」を考えることが欠かせません。
- なぜできたのか
- なぜできなかったのか
- なぜその場面で迷ったのか
- なぜ次につなげる必要があるのか
例えば、「患者さんとうまく話せなかった」と書くだけでは浅い振り返りです。しかし、「緊張して質問ばかりになり、患者さんの表情や反応を見る余裕がなかった」と原因まで考えられると、一気に内容が深まります。振り返りが浅くなる人は、出来事を書いて終わっていることが多いです。逆に振り返りが深い人は、出来事の背景や自分の行動の意味まで考えています。
実習1日の振り返りの具体例
ここでは、一日の実習の振り返りを一つの流れとして示します。
本日の実習では、患者さんのバイタルサイン測定を落ち着いて実施することができた。また、自分から患者さんにあいさつし、短時間ではあるが会話をすることもできた。しかし、測定した値を患者さんの状態や疾患と関連づけて考えることが十分にできなかった。さらに、患者さんから訴えられた疲労感についても、その背景や原因を深く考えられなかった。その原因として、疾患に関する知識不足があり、正常値との比較や症状の意味を十分理解できていなかったこと、また患者さんの訴えを聞いたあとに一歩踏み込んで考える姿勢が不足していたことが考えられる。今後は、事前に疾患や治療内容、観察項目を学習したうえで実習に臨み、得られた情報を記録するだけでなく、その意味や患者さんへの影響まで考えることを意識したい。
このように、一つの振り返りの中で「できたこと」「できなかったこと」「原因」「今後の行動」がそろっていると、読み手にも考えた過程が伝わりやすくなります。
悪い振り返りと良い振り返りの違い
悪い例
今日は患者さんと関わることができてよかったです。うまく話せなかったので、次はもっと頑張りたいと思います。
良い例
本日は患者さんと自分から関わることができたが、会話の中で患者さんの訴えを十分に引き出すことができなかった。その原因として、緊張から質問が一方的になり、患者さんの反応に合わせて会話を広げることができなかったことが考えられる。今後は、開かれた質問を意識し、患者さんの表情や反応を見ながら関わりたい。
この違いは大きいです。悪い例では気持ちしか見えませんが、良い例では課題、原因、改善策が見えます。指導者が知りたいのは、あなたが何を感じたかだけでなく、その経験から何を学び、どう変えようとしているかです。
指導者が見ているポイント
実際に指導してきた中で、評価される振り返りには共通点があります。
- できなかったことを正直に書いている
- 原因を自分なりに考えている
- 次の行動が具体的である
- 患者さんの視点が入っている
- 表面的な反省で終わっていない
逆に、感想だけで終わっている振り返りや、抽象的な内容でまとめられている振り返りは評価されにくい傾向があります。大切なのは、きれいな文章を書くことではなく、考えようとしている姿勢が見えることです。
実習で使える振り返りのコツ

具体的に書く
「頑張る」「気をつける」ではなく、「何をするか」を具体的に書くことが大切です。例えば、「次回は患者情報を事前に整理してから関わる」「報告前に要点をメモしてから話す」のように書くと伝わりやすくなります。
原因を考える
できなかったことには必ず原因があります。その原因がわかると、改善の方向が見えてきます。知識不足なのか、準備不足なのか、緊張なのかを考えるだけでも大きな違いがあります。
行動につなげる
振り返りは反省文ではありません。反省して終わるのではなく、「次に何を変えるか」がもっとも重要です。
振り返りとアセスメントの関係
振り返りは、アセスメントとも深く関係しています。患者さんの状態を正しく理解できていないと、振り返りも浅くなりやすいです。
例えば、患者さんが疲れていた理由を考えずに「元気がなかった」とだけ書いても、そこから学びは深まりません。しかし、疼痛や睡眠不足、活動量の増加などの背景を考えられると、振り返りの内容は大きく変わります。アセスメントが苦手な方は、アセスメントの例文と考え方もあわせて読むと理解がつながりやすくなります。
まとめ
看護実習の振り返りは、単なる感想ではなく、成長のための大切な学習です。
- できたこととできなかったことを整理する
- 原因を考える
- 次の行動につなげる
この3つを意識するだけでも、振り返りの質は大きく変わります。最初から完璧に書く必要はありません。大切なのは、「なぜ」と考えることをやめないことです。
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