1. 実習記録が「差し戻し」になる本当の理由:教員が見ている「安全の証拠」
看護学生にとって、実習記録は最大の壁ですよね。教員や指導者が記録を厳しくチェックして何度も書き直しにさせるのは、決してあなたをいじめて困らせるためではありません。
実は、記録を通して私たちは「この学生に、明日も患者さんを任せて安全か?」という一点だけを確認しているのです。
💡 教員が評価する「合格する記録」の基準
- 低評価(再提出)の記録: 行動や出来事だけをただ書き連ねただけの「作業報告書」
- 高評価(一発合格)の記録: 根拠を持って患者さんの変化を捉えた「看護の設計図」
教科書の言葉をそのまま丸写しして綺麗にまとめる必要はありません。不器用でもいいから「目の前の受け持ち患者さん」のためにあなたなりに一生懸命考えた言葉を、私たち教員は待っています。
ただ枠を埋めるためのきれいな文章を目指すのは、今日で終わりにしましょう。
2. Sデータ(主観的情報):患者さんの「心の声」を可視化する
「痛いです」「よく眠れました」という発言をただS欄に並めるだけでは、看護の記録としては不十分です。
大切なのは、その言葉が「どのような文脈や表情、態度で発せられたか」という非言語の情報を逃さず記述することです。
私が教員時代に本当に感銘を受けた記録があります。ある学生は、患者さんの「大丈夫、痛くないよ」という発言の真横に(※発言時、右手にギュッと力が入り、ベッド柵を強く握りしめている。額にはうっすらと冷や汗あり)と書き添えました。
これがあるだけで、患者さんが医療者に無理をして痛みを堪えていることが一目でわかりますよね。
3. Oデータ(客観的情報):数値の「意味」を個別性で読み解く
検温値や血圧などの数値を正確に書くのは基本ですが、本当に重要なのはその数値が「その患者さんにとって、今どのような意味を持つのか」というアセスメントです。
15年間の教員生活で、多くの学生が「教科書の基準値」の枠だけに縛られて苦しむ姿を見てきました。
⚠️ 個別性を導き出すためのトリプル視点
正常・異常を判断する際、教科書の数値だけで完結させないでください。必ず「①患者さんのベースライン(平熱や普段の血圧)」「②疾患の経過(急性期か回復期か)」「③内服薬の影響」の3つをセットで比較して考えます。
例えば、収縮期血圧が140mmHgだったとします。
教科書的には「軽度高血圧」ですが、普段のベースラインが100mmHgの人にとっては「異常事態(高すぎる)」です。
逆に、普段が160mmHgの脳梗塞慢性期の人にとっては「コントロール良好で安定」かもしれません。この「過去の本人データとの比較」こそが、実習記録の個別性を生み出す最大のカギになります。
4. 【疾患別・実践編】教員を唸らせるアセスメント書き換え例
① 心不全:病態生理と「生活の辛さ」を繋げる
× 悪くはないけれど、お決まり of 低評価例:
「心機能が低下しており、下腿浮腫が認められる。今後も水分管理を徹底する。」
◎ 教員が思わず唸る、人間味のある合格例:
「Aさんは本日、両側下腿に中等度の凹窩性浮腫を認める。昨日比で体重が0.7kg増加しており、夜間に3回の頻尿がある。
Aさんは『喉が渇いて辛い』とお茶を強く欲しがるが、水分制限による精神的苦痛が安静を阻害しているように見える。
単なる教科書通りの一律な水分制限の継続を押し付けるのではなく、口腔内の乾燥を和らげる氷片の活用などのケアを提案し、Aさんの水分制限に対する『頑張り』を肯定して認める声掛けを優先すべきと判断する。」
② 糖尿病:数値の先にある「これまでの人生」を想う
◎ 実習室で最高A評価をもらえる深い考察例:
「食後血糖値は240mg/dLと高いが、Aさんはベッドサイドで持ち込みの菓子を食べていた。
これを単なる学生の視点で『知識不足』や『治療への非協力(わがまま)』と片付けるのは簡単である。
しかし、Aさんは長年、深夜まで及ぶ仕事の激しいストレスを甘いもので癒してきた背景(生活史)がある。
単に禁止や制限の指導を押し付けるのではなく、Aさんがこれまでの人生で何を大切にして生きてきたかに焦点を当て、本人が自発的に納得できる『小さな間食の工夫』から一緒に見直す段階にあると考える。」
③ 脳梗塞(回復期):恐怖心に寄り添うアセスメント
◎ 患者さんの行動の理由まで見抜いた適切な視点:
「左片麻痺があるが、Aさんは『早く元気になって一人でトイレに行きたい』と離床への意欲が非常に積極的である。
しかし、実際に足を踏み出す瞬間に一瞬肩がすくんで動きが止まる様子があり、転倒への強い恐怖心が潜在していることが伺える。
本人の高い意欲を尊重しつつも、安全な移乗動作のコツを『学生が一緒に』付き添って反復練習し、小さな成功体験を積み重ねることで、動作に対する自己効力感を高める介入必要である。」
5. 根拠(エビデンス)を最短で見つけるための3つのコツ
提出時に指導者ナースから「で、このケアの根拠は何?」という質問をされるのが怖いのは、正しい探し方を知らないからです。
私も新人ナース時代は、どの本を読めばエビデンスが載っているのかわからず、朝まで病院の図書室を彷徨ったことがあります。
効率よく根拠を見つけるコツは以下の3つです。
- 1. 疾患別看護過程の専門書を軸にする: ネットの個人ブログなどの曖昧な情報ではなく、学校の図書室にある信頼できる書籍(医学書院やメヂカルフレンド社など)の疾患別看護過程のページを真っ先に開きましょう。答えがそのまま載っています。
- 2. 「なぜ」を3回脳内で深掘りする: 「なぜ浮腫が出るのか? ➔ 心機能が落ちて血液が滞るから ➔ なぜ滞るのか? ➔ 腎臓への血流が減って尿が出なくなるから」というように、解剖生理のレベルまで遡ると、自然と一本の太い根拠が見えてきます。
- 3. 医療用の薬の添付文書を活用する: 疾患伴う薬剤の副作用や観察の注意点は、ネットで「PMDA(医薬品医療機器総合機構)」のサイトを開き、患者さんが飲んでいる薬の添付文書を直接見るのが最も正確で、教員への強力なエビデンスになります。
6. 実習記録を「時短」するための逆算思考
多くの学生さんの記録が終わらない最大の理由は、実習がすべて終わって、家に帰ってから白紙の記録用紙を前に「さて、何を書こうかな…」と考え始めるからです。実は、実習記録の勝負は「午前中の検温(バイタル測定)が始まるまで」にすでに決まっています。
「今日、私は受け持ちのAさんに、最終的にどんな看護ケアを届けて、どんなポジティブな結果(反応)を得たいのか」
この「今日の着地点(ゴール)」を朝一番の行動計画の時点で明確に決めておけば、日中に集めるべきデータ(S情報・O情報)は勝手に必要なものだけに絞られます。
無駄なメモを大量に取る必要がなくなり、夜に机に向かってからの執筆時間は驚くほど劇的に短縮されますよ。MacBookのテキスト入力やiPadのノートアプリを活用すれば、さらに効率化が可能です。
⏱️ 家で悩まないための日中のスマートメモ術
| 現場の場面 | ポケットのメモ帳に書くのはここだけ! |
|---|---|
| 朝の検温時 | 測定した数値 + 患者さんの「今の気分や表情」の生の一言 |
| 午後の援助中 | 「実際にケアをやってみてどうだったか」という患者さんの具体的な反応や言葉 |
ただ、いくら日中にメモを取ろうとしても、「あれ、この検査値の基準値ってなんだっけ?」「この疾患の観察ポイントは何だっけ?」とナースステーションやベッドサイドで分からなくなってしまっては、スマートなデータ収集はできません。
指導者さんの前で固まらず、夜の記録を爆速で終わらせるために、私がすべての教え子に「これだけは必ず白衣のポケットに忍ばせておきなさい」と指導している、お守りのような実習必携本があります。
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バイタルサインの基準値はもちろん、実習でよく出合う主要疾患の観察項目やケアの根拠、アセスメントの視点が白衣のポケットサイズにギュッと凝縮されています。これがあるだけで現場で迷う時間がゼロになり、日中のメモの質が劇的に上がって夜の記録が本当にラクになりますよ!
7. 指導者や教員との「対話」を恐れないで
夕方のカンファレンスや提出時に「で、この計画の根拠は?」と冷たく詰められると、自分の存在すべてを全否定されたような悲しい気持ちになりますよね。
でも、教員や指導者はあなたをいじめて落としたいわけでは決してありません。あなたの頭の中の思考を一緒に整理し、患者さんの安全を一緒に守りたいだけなのです。
もし突っ込まれてわからないときは、黙り込んで固まるのではなく、「私の勉強不足で、今の質問に正確な根拠をお答えすることができません。申し訳ありません。ただ、私はAさんの苦痛を和らげたいと考え、本日はこの計画を立てて実践しました。明日までに不足している視点を調べてきますので、ヒントを教えていただけますでしょうか?」と素真面目にぶつかってみてください。
その誠実な熱意は、教える側の心を必ず動かします。
8. 看護実習記録Q&A:学生さんからよく聞かれる悩み
Q. 記録のボリュームが多すぎてどうしても寝られません。何を削ればいいですか?
A. 「完璧に綺麗に清書しようとする時間」を真っ先に削りましょう。 私たち教員が提出された記録用紙で見ているのは、文字の美しさやペン字の綺麗さではなく、看護としての『論理的な思考プロセス』です。修正テープの跡だらけでも、二重線での修正ばかりでも全く問題ありません。アセスメントの欄に、あなたの思考の形がしっかり宿っていれば、それは教員から見て素晴らしい合格の記録ですよ。
9. まとめ:記録はあなたを守り、成長させる「地図」になる
今、あなたが眠気をこらえて必死に書いているその記録の一行は、明日ベッドサイドで患者さんにかける言葉、届けるケアの質をガラッと変える本物の力を持っています。
悩んで、書き直して、また教員に突っ込まれて悩んで……その泥臭くもがいた時間は、将来あなたが現場に出て「自分で深く考えることのできる自立した看護師」になったとき、あなたを裏切らない強固な土台になります。
実習は確かに過酷でしんどいです。
でも、一人の患者さんとこれほどまでに深く向き合い、看護の喜びや通じ合う瞬間を知ることができる時間は、学生時代の今しかありません。
効率化できるデバイスや思考法を駆使して、記録をただ提出するための「苦痛な義務」ではなく、あなたと患者さんを繋ぐ「大切な対話」として捉え直してみてくださいね。
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